[二階堂] 二階堂洋平 : 戦争があった。

[二階堂] 二階堂浩平 : 銃撃、爆撃、地に鳴り響く轟音を未だに体が覚えている

[二階堂] 二階堂洋平 : そして、戦争が終わった俺たち双子を迎えたのは、また戦争だった

[二階堂] 二階堂浩平 : 『聖盃戦争』......
俺たち双子はたまたま魔術師の血を引いていたという理由でお呼びがかかった

[二階堂] 二階堂洋平 : 異存などあるものか。
俺たちは兵士だ。先祖の古い軍式礼装もあった。
そうだ。

[二階堂]     : 俺たちの戦争は
まだ終わっていない

[二階堂]     :

[二階堂] 二階堂浩平 : 英霊の召喚。この戦争に不可欠な従者であり、矛。

[二階堂] 二階堂洋平 : 過去の英雄たちを模した...戦争で武勇を轟かせた...英霊たち

[二階堂] 二階堂浩平 : きっと恐るべき...化け物のようなものが喚ばれるのだろう

[二階堂] 二階堂洋平 : そう、思っていたが...

[二階堂] 死神の息子 : 「おお!見ろリズ、パティ!この完璧なシンメトリー!」

[二階堂] 死神の息子 : 「現世の奇跡だ!俺はもう猛烈に感動している!」

[二階堂] 死神の息子 : 「それに引き換えお前らは!双子のくせに身長違うし、髪型も違う!」

[二階堂] 死神の息子 : 「おまけに胸の大きさも違うじゃないか!」
そう言いながら傍らの少女2人の胸を鷲掴む

[二階堂] リズ : 「悪かったな妹より小さくて!」
拳骨で殴りかかる

[二階堂] パティ : 「きゃはははは♪」

[二階堂] リズ : 「なにが左右対称だ!大体お前の3本線も左髪にしかついてねぇーじゃねえか!」

[二階堂] 死神の息子 : 「お...お前それは...」

[二階堂] 死神の息子 : 「クソ...俺は醜い豚野郎だ...生まれてきていい存在ではなかった...」

[二階堂] 死神の息子 : 「鬱だ...死のう」

[二階堂] 二階堂浩平 : 目の前で繰り広げられるコントじみたやりとりを前に、俺たちは唖然としていた

[二階堂] 二階堂洋平 : 「おい浩平。こいつらはなんだ?」

[二階堂] 二階堂浩平 : 「俺にも分からないぜ洋平。英霊ってのはこんなもんなのか?」

[二階堂] パティ : 「大丈夫♪キッド君はねェブタじゃないよ。ブタは「ニャー」って鳴くもん♪」

[二階堂] 二階堂洋平 : そう話していると短髪の女に励まされ気を取り直した少年...英霊がこちらに向き直した

[二階堂] 死神の息子 : 「んんん...失礼した。紹介が遅れた」

[二階堂] 死神の息子 : 「俺は『アーチャー』、もしくは『リーパー(死神)』。あなた達のような完全な左右対称と共に戦えるならば光栄だ」

[二階堂] 死神の息子 : 「究極の規律を追い求めるため、この戦争を戦わせてもらう。よろしく頼む。」

[二階堂] 死神の息子 : そう言いながら浩平に右手を差し出す

[二階堂] 二階堂浩平 : ......究極の規律。つまるところは支配。

[二階堂] 二階堂洋平 : それをお題目に掲げたあの戦争で、どうなった?

[二階堂] 二階堂浩平 : 戦友は今でも荒れた冷たい石の下だ。骨一つ故郷に帰ることができぬまま。

[二階堂] 二階堂洋平 : 理解した。英霊などと分かりあう必要はない。

[二階堂] 二階堂浩平 : 勝ち残れるならばそれでいい。ようは道具なのだ。

[二階堂] 二階堂洋平 : 浩平は薄気味悪い仏頂面を崩さず、握手に応える

[二階堂] 二階堂浩平 : 「よろしく」

[二階堂] 死神の息子 : 「......うん。ではもう1人も」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「ああ、よろしく」
同じように右手を差し出す

[二階堂] 死神の息子 : 「違う!だめだ!」

[二階堂] 死神の息子 : 「こっちとは右手で握手したのだから、貴方とは左手で握手しなければバランスが取れない!!」

[二階堂] 死神の息子 : 「よろしく!」
むりやり左手で握手をした

[二階堂] リズ : 「こういう奴なんです...すみません」

[二階堂]     : かくして召喚は終わり、また一つの主従が誕生した。

[二階堂]     : この出会いは死の宣告か?秩序のもたらす救いか?それとも...

[二階堂]     :

[二階堂]     :

[二階堂] 死神の息子 : 「大体気に入らん。この聖盃戦争とやら」

[二階堂] パティ : 「な〜〜に?前まで乗り気だったんじゃん♪」

[二階堂] 死神の息子 : 「なにだと?当然、参加上限数の話だ!」

[二階堂] 死神の息子 : 「なぜ"7"騎なんだ!?"8"までたった1騎だろう!」

[二階堂] 死神の息子 : 「あと1人くらい根性を見せないか聖盃!"8"ならば完全なるシンメトリーだというの...ああイライラするぅ〜〜〜」

[二階堂] リズ : 「まーまー、今回は6騎見たいだし、8と似てていいじゃん」

[二階堂] 死神の息子 : 「ぬうう...あとちょっと線が伸びればぁぁ...もどかしい!」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「...まるで子供のよう...いや、子供そのものなのか、浩平」

[二階堂] 二階堂浩平 : 「本当に戦えるのか怪しいもんだ、洋平」

[二階堂] パティ : 「ねーねー、おっさんたちなんか感じ悪くない?撃っちゃおうよ♪」コソコソ

[二階堂] リズ : 「やっちまうか?やるか?」コソコソ

[二階堂] 死神の息子 : 「やめろお前たち。仲間割れなどもってのほかだ」

[二階堂] 死神の息子 : 「どうせやるなら、きっちりきっかり決闘しろ!せっかく双子二組なんだし」

[二階堂] 死神の息子 : 「だが、あの完全な左右対称にお前たちが勝てる可能性はないだろうがな!」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「味方じゃないのか...あいつらは」

[二階堂]     :

[二階堂] 二階堂浩平 : 人間の領域を超えたサーヴァントの戦闘。俺たちが介入する隙間もない、常識の埒外の光景だった。

[二階堂] 二階堂洋平 : あれほどの力があれば、この世の支配など簡単だろう。ならば、聞いておきたいことがある。

[二階堂] 死神の息子 : 「この額縁が2cm傾いてるような気がする...もうちょっとだ...もうちょっと...」

[二階堂] パティ : 「きゃはははは♪神経質すぎだね♪」

[二階堂] リズ : 「もういいだろ...傾いてないって...」

[二階堂] 二階堂浩平 : 「アーチャー...いやリーパーか?話がある」

[二階堂] 死神の息子 : 「ちょっと待てマスター!今これを直しているんだ!邪魔するな!」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「分かった...少し待とう」

[二階堂]     : 2時間後

[二階堂] 死神の息子 : 「すまない待たせたな。話というのは?」

[二階堂] 二階堂浩平 : 「...額縁一つに2時間も待たせるとは...こだわりがすぎるな、洋平」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「では、本題に入る」
「お前の求める究極の規律とはなんだ?」

[二階堂] 死神の息子 : その質問を、真剣に、真っ直ぐに受け止め、少年は言う

[二階堂] 死神の息子 : 「俺の求める究極の規律とは、あらゆる意味でバランスのとれた世界だ」

[二階堂] 死神の息子 : 「きっちり世界の"善"と"悪"のバランスがとれれば争いも差別も生み出されない。大事なのはバランスなのだ」

[二階堂] 二階堂浩平 : 「.......」

[二階堂] 二階堂洋平 : あまりに壮大な夢。しかし少年の佇まいは、それを成し遂げる事に微塵も臆していないようだった。

[二階堂] 二階堂浩平 : ならば、言うべきことがある。マスターではなく一兵士として。

[二階堂] 二階堂洋平 : 「それは、力による支配だろう。人間全てがそれを求める訳ない。」

[二階堂] 二階堂浩平 : 理想を求めるならば争いが起こる、必ず。今回の戦争のように。

[二階堂] 死神の息子 : だが、その言葉を一蹴するかのように

[二階堂] 死神の息子 : 「そんなコト知るか!きっちりかっちり完璧な世界にしないと俺の気がすまん!!」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「なんだと...!?行き過ぎた正義は恐怖政治と一緒だ!いたずらに死人を増やすだけだろう!」

[二階堂] 死神の息子 : 「虫唾が走るわ!俺は死神だ。殺しの許可など一切与えん!」

[二階堂] 二階堂浩平 : 「...お前の正義が本当に正しいと思えるか?お前のような神経質な死神の規律が」

[二階堂] 死神の息子 : 「思わん!正しくない時もあるだろう!」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「な、なに...!?」

[二階堂] 二階堂浩平 : 2人とも、あっけにとられた。
あれだけ自分の意思に自信を持っていた男がさも涼しい顔で自分を否定するのだから

[二階堂] 死神の息子 : 「当然だ。俺も自信の欠点ぐらい分かっている」

[二階堂] 死神の息子 : 「だが、心配はしていない」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「そ、それはなんでだ?」

[二階堂] 死神の息子 : 「当然、俺には仲間がいる!」

[二階堂] 死神の息子 : そう言い、背後で遊んでいた少女2人を見る

[二階堂] パティ : 「ん?なんか呼ばれたかなぁ♪」

[二階堂] リズ : 「まだ話の途中だ。あっちあっち」

[二階堂] 死神の息子 : 「あの2人だけじゃない。俺には道を踏み外した時に、助けてくれる友人がいる!」

[二階堂] 死神の息子 : 「マスター達2人のようなシンメトリーではない。だが、一人一人違うからこそ奇跡のバランスを生むことができる!」

[二階堂] 死神の息子 : 「この世界も一緒だと、俺は信じている」

[二階堂] 二階堂浩平 : 少年じみた神、俺たちとは見てるものすら違うのかもしれない

[二階堂] 二階堂洋平 : だが、だが、

[二階堂] 二階堂浩平 : もしその夢が実現するならば、それはどんなに幸せで、

[二階堂] 二階堂洋平 : 戦争も、恐怖もない、本当の平和なのだろう

[二階堂] 二階堂浩平 : 「...お前の言う"究極の規律"は聞かせてもらった」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「ありがとう。...いい話だったよ」

[二階堂] 死神の息子 : 「おっと待てマスター。俺のことを話したのだから、きっちりかっちりあなた達のことも話してもらおう」

[二階堂] 死神の息子 : 「そうだな...マスター達は何を願うんだ?」

[二階堂] 二階堂浩平 : 願い。俺たちは兵として国に派遣された身だ

[二階堂] 二階堂洋平 : 優勝すれば国に聖盃を納める。そう指示が出ている

[二階堂] 二階堂浩平 : だが、もし、願えるのならば、

[二階堂] 二階堂洋平 : 「...俺は帰りたい、浩平」

[二階堂] 二階堂浩平 : 「ああ、洋平」
「俺たちは...戦場から帰りたい」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「故郷の...静岡県に帰りたい」

[二階堂] 二階堂浩平 : 「戦争を終わらせて...友人たちを故郷の土に眠らせてやりたい...」

[二階堂] 死神の息子 : 「...そうか...」

[二階堂] リズ : 「ちょっと重すぎるぞおっさんたち...」コソコソ

[二階堂] パティ : 「対象年齢がかなり離れてるね♪」コソコソ

[二階堂] 死神の息子 : 「その願い、俺が叶えよう!この戦争に勝って、きっちりかっちりとな!」

[二階堂]     :

[二階堂]     :

[二階堂] 二階堂洋平 : 戦争が終わって、俺たちは故郷の静岡県に帰ってきた

[二階堂] 二階堂浩平 : 2人で、生きて、

[二階堂] 二階堂洋平 : 戦場から、帰ってこれたのだ

[二階堂] 二階堂浩平 : 「...洋平、退役もしたし、帰って何をしようか」

[二階堂] 二階堂洋平 : 「そうだな...みかんでも作ろうか。好きだろう?」

[二階堂] 二階堂浩平 : 戦場とは無縁の、穏やかな日々が過ぎる

[二階堂] 二階堂洋平 : そう中で、ふと思うのだ

[二階堂] 二階堂浩平 : あのとき現れた、双子の姉妹と死神は、

[二階堂] 二階堂洋平 : 俺たちの狂気を、殺してくれたのだと──

[二階堂]     :